うちの断酒会に、減酒により飲酒量を減らして生活している方がいます。
そのAさんは60代で、ずっと「自分はアルコール依存症ではない!」と言い張っていました。なんと、断酒会に飲んで酔っ払って来られたこともあります。
(うちの断酒会は正式には「アルコール問題を抱える人の集まり」なので、絶対酒はNGというわけではないのです)
最終的に、外来で減酒による治療を選びました。セリンクロ(ナルメフェン)という新薬を飲みながら減酒・節酒の生活を送られてます。夕方、晩酌に焼酎1合と決めて、それしか飲まないそうです。
セリンクロ + 減酒・節酒は本当に効果があるのでしょうか?
セリンクロによる減酒・節酒の治療とは
減酒・節酒は2017年にあの久里浜医療センターが「減酒外来」という画期的な治療を始めたのがはじまりです。
これまではアルコール依存症と診断されると断酒、つまりまったく酒を飲まないといった治療法しかありませんでした。
アルコール問題があっても病院に行かない
そのため「酒を止められるから」という理由で、アルコール依存症でも病院に行かない例が後を絶ちませんでした。
薬は抗酒剤シアナマイド、ノックビン、飲酒欲求を抑えるレグテクトは出ていましたが、基本は禁酒補助薬でした。
減酒外来は減酒によってアルコール摂取量をコントロールし、健康被害などのアルコール問題を防ごうという狙いです。
減酒外来とは
減酒外来とは、その名の通り『お酒を減らすため』の外来のことです。
ヘルスUP日経Goodday30+ より引用
これは、アルコール依存症の人、そして依存症まで行かないけれど飲み過ぎが気になる人(酒乱などの何らかのアルコール問題を持っている人も含む)を対象にしています。
最終目的は必ずしも断酒でなくてもよく、通院しながら減酒によって、さまざまな問題を解決することを目指していきます。そして、酒量については、本人と医師で相談して決めています
「少量に自制してアルコールを飲んでも良い」という治療法なのですが、酒量が多い酒飲みやアルコール依存症の初期の方に限ります。
Aさんも外来に通いながらの減酒療法で、焼酎1日1合だけと決めて、食事前にたしなんでいるそうです。ちゃんとコントロールをされています。
セリンクロ(ナルメフェン)とは
2019年3月に大塚製薬から減酒をサポートする薬として承認されました。
大塚製薬は2019年3月5日、アルコール依存症患者に対する飲酒量低減薬「セリンクロ錠10mg」(一般名:ナルメフェン塩酸塩水和物)を発売した。
ミクスonline より引用
アルコール依存症患者が飲酒量を減らす過程を補助する薬剤は同剤が初めて。
薬価は10mg錠296.40円。中枢神経系に広く存在するオピオイド受容体調節作用を介し、飲酒欲求を抑制することで飲酒量を低減させる。
用法・用量は、1日1回10mgを飲酒の1~2時間前に服用する。
セリンクロの減酒効果
左側が多量飲酒の日数、右側が節酒アルコールのグラム数ですが、かなりの効果が認められますね。
Aさんもセリンクロを飲みながら減酒をかれこれ何年も外来通院を続けているので、大酒飲みやアルコール依存症初期には効果あり、有効だと考えられます。
アルコール依存症の治療の入口としての効果がある
アルコール依存症といえば断酒しかなかったものが、少しだけ飲むことができる減酒・節酒療法。
アルコール依存症の治療の敷居が低くなる
断酒は途中で断念する人が後を絶たなかったのですが、「酒の量を減らすだけ」ということで敷居が低くなり、酒飲みや軽度のアルコール依存症が診察に訪れやすくなったという事実があります。
無理やりアルコール飲酒量をコントロールすることで、本格的なアルコール依存症にならずに済みますし、身体も傷めずに済みます。
飲酒をコントロールできないことも
Aさんはもう定年退職した後で、奥さんから少しお小遣いを渡されています。(やはり、たくさんお金があると酒を買ってしまうので)
趣味はボート、つまり競艇です。
家が競艇上の近く
家が競艇場に近いので、レースがある日はいつも通っているそうです。
お小遣い数千円を渡されてそれで舟券を買うのですが、時々は当たる。当たってしまうとお金が増える。
お金があると飲んでしまう。焼酎1合と決めているのに、ハメをはずしてそれ以上飲むことも多々あるのだとか。
筆者もパチンコに勝ったら飲んでいたので気持ちはわかるな、うん。
ギャンブルに勝って
ある暖かい日曜日に、勝って飲んでしまい、駅前で寝てしまったのだとか。
そして夕方、警察に通報され、一晩留置場で過ごしたのだとか。
奥さんはもの凄い心配したらしいです。
減酒の「少しだけなら飲んでもよい」ため、気のゆるみがそういった行動になってしまうのだと思います。
マネしてみたものの
以前、「Aさんが酒をコントロールできるなら筆者もできるだろう」と思い軽く飲んでみました。
ところが、やはり1杯では止まらず。1杯が2杯になり、2杯が4杯になり・・・・・・夜まで。
次の日も飲酒欲求が強く出て連続飲酒に。
結局、数日間連続飲酒になり、入院するハメになりました。
完全なるアルコール依存症には、減酒はムリなようです。
あきらめて断酒するしかないですね。頑張りましょう。
まとめ アルコール依存症の新しい治療法【セリンクロ】
セリンクロ(ナルメフェン)による減酒・節酒療法は、まだアルコール依存症にまでなっていない酒飲みか、アルコール依存症の入り口の方には実際に効くようです。
完全なアルコール依存症が減酒・節酒にトライしてみましたがやはりコントロールできずムリでした。断酒しかないようです。