どうしてもお酒が止められず、生活に支障がでてきました。
病院にいったら「アルコール依存症」と診断され、断酒するしかないと言われました。
ただでさえ酒をやられないのに、どうやって断酒を成功させればよいのでしょうか。
アルコール依存症の治療は、断酒か減酒しかない
残念ながら現在の医学では、アルコール依存症を治す方法がありません。
重度のアルコール依存症は断酒と言って、酒を完全に断つしか、治す方法がありません。
アルコールという物質の薬物依存となっているため、他の薬物と同じく、止めるしかないのです。
アルコール依存症の治療について、次のように述べられています。
残念ながら依存症の人がコントロールして飲めるようにする治療法は存在しません。
公益社団法人日本精神神経学会 松下幸生先生に「アルコール依存症」を訊く より引用
特に、人間関係や社会の信用が失われるような破壊的な飲酒をする人、肝硬変など身体合併症が重篤な人、過去に節酒(アルコールをコントロールして飲むこと)に挑戦しても失敗して依存症の再発を繰り返している人などは、生涯の断酒が必要と言えます。
まだアルコール依存症の症状が軽いうちは「減酒」という方法もある
2019年に、国内初のアルコール依存症の飲酒量低減薬セリンクロ(一般名:ナルメフェン)が製造販売を承認されました。
これにより、軽いアルコール依存症者は断酒でなく「減酒」(1日1合とか、少しだけ飲む)ことが可能となりました。
【参考記事】
⇒アルコール依存症の新しい治療法【セリンクロ】による減酒治療の効果
アルコール依存症の患者によく「卵を一度茹でてしまうと茹で卵になってしまい、二度と生卵に戻らない」と言われるのですが、それと同じように、一度アルコール依存症になってしまうと二度と元には戻れません。
アルコール依存症になる前にお酒を減らす
大酒飲みでまだアルコール依存症になっていない人は、完全なアルコール依存症者になる以前に、どうにかしてお酒を減らしましょう。
重度のアルコール依存症になってしまうと、断酒治療するしか酒の害を防ぐことができなくなります。
【参考記事】
⇒アルコール依存症体験談③離婚で家族を失い底つき、ひとり孤独死
アルコール依存症者は少しだけ飲むのは、タバコを減らしていくのが難しいのと同じく難しいです。
「タバコの本数を減らしてずっと苦しい思いをするより、全部止めて禁煙したほうがまだ楽だ」というのは、タバコを吸われる方は言われます。
酒も、同じことが言えます。きっぱりと酒を止める断酒。
しかし、その断酒を継続するのがとても難しいのです。
※軽いアルコール依存症者のみ適用される「減酒治療」の場合、「セリンクロ」という薬で飲酒欲求を減らしてコントロールします。
アルコール依存症の治療、断酒の3本柱
よく言われる「断酒の3本柱」というのがありますね。断酒の3本柱はこのようなものです。
断酒のための「3本柱」を使って断酒を継続していきます。
駒木野病院 心の病について より引用
3本柱とは、1本目は、アルコール依存症の専門外来に通院することです。
2本目は、抗酒薬です(断酒継続のための内服薬。肝臓でのアルコールの分解を阻害する働きがあり、この薬の内服後に飲酒するとひどい二日酔いの状態となる。この効果を利用して断酒継続のひとつの支えとする)。
3本目は、自助グループに通うことです(断酒会やAAなど。断酒の継続を目的とした、アルコール依存症患者様の市民団体)
断酒の3本柱 ①外来通院する
精神科や精神病院、クリニックに定期的に通うことです。
筆者も通ってますが、酒を飲んでいないかどうか、月に1回採血され、チェックされます。
断酒の3本柱 ②抗酒剤
抗酒剤とは、断酒の手段として用いられるシアナマイド、ノックビンのことです。
水薬がシアナマイド、粉薬がノックビンです。
これを飲んだあとアルコールを摂取すると酷い目にあいます。
はじめに、心臓が400メートル走したくらいバクバクと激しく鼓動し始めます。
これが何時間も続きます。
視界は白くなり、太陽の元では何も見えなくなります。
そして気持ち悪くなり、吐き気がしてきます。
抗酒剤シアナマイド、ノックビンのメカニズム
- シアナマイド・ノックビンの作用で、肝臓でのアルコール代謝が遅くなる
- 肝臓でアルコールが代謝された後に出来る物質、アセドアルデヒドの代謝も極端に遅くなる(アセドアルデヒドは発ガン物質ですが、酒が強い人はすぐ代謝してしまいます。しかし、薬のせいで代謝が遅くなります。)
- アセドアルデヒドのせいで気持ちが悪くなり、それ以上酒が飲めなくなる
このような作用により、酒が飲めない下戸と同じ状態になるため、断酒治療が成功しやすくなります。
「シアナマイド飲んで酒を飲んで救急車を呼んだ」という話は、いろんな人から聞きます。
断酒中に飲んだ罰ゲームみたいなものです。
断酒の3本柱 ③AAや断酒会など自助グループに参加する
断酒会やAAは何か、といいますと。
アルコール問題を抱えた本人や家族が集っていろいろ話しあい、「皆で頑張って断酒を続けよう」という会です。
役所の福祉センターや、病院などにパンフレットが置いてあります。
もちろん家族が参加できる「家族会」なるものもあります。
「うちだけでない、さまざまな家庭でアルコールが原因で悩んでいる人がいる」
「アルコール問題がある人への対策、アドバイスなどが聞ける」
などのメリットがあります。
断酒の3本柱 ④レグテクト錠
そして少し前になりますが、4本目の柱が登場しました。
レグテクト錠(飲酒欲求を抑える薬)の服用という手段です。
病院で処方され飲んでいる方、何名かに効果を聞いたところ「酒を止める、断酒治療を続けたい」と考えている方には、効果があるそうです。
酒は飲み続けたいが、病院からレグテクトを出されている、そういう人には、効果がないとのことです。
私も飲んでいますが、まず副作用で下痢になります。便秘気味のひとには良いかもです。
酒の自販機のそばを通る時、「飲みたいな」、と思っていたのが「特に飲みたくはないな」と感じるくらいの抑制効果があります。
飲酒欲求を抑える薬
レグテクト錠(ジェネリック)
はこちらから
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これらの4つの柱により、断酒治療を成功させ、アルコール問題の対策を行います。
アルコール依存症一歩手前の方へ
上で述べたように、飲みすぎによりアルコール依存症になってしまうと、もう2度と酒を飲めなくなります。
酒を飲むと止まらなくなり、仕事に行けず家事もできず、家庭が破綻、離婚、ひとり孤独死になる可能性があります。
が、依存症になる寸前の方であれば、まだ救うことができます。
ブログ記事にコメントがありました。
「主人は休みの日、午前中から飲んでいる。しかし、仕事はサボることなく行っている」
筆者の想像になりますが、ご主人さんは毎日晩酌をして相当飲まれているのだと思います。
だから飲酒欲求が高く、休日は午前中から飲んでいるのだと思われます。
アルコール依存症の寸前の状態だと思われます。
公園でお酒を飲む、パチンコでお酒を飲む
以前の筆者も酷い状態でした。
休日、幼い娘を連れて近所の公園へ行くのですが、ポケットにワンカップを隠して飲む。昼になるともう泥酔して帰り、妻にに激昂される。
パチスロも、酔いながら。パチンコ店内で飲むと風営法違反になるため、外に出てコンビニで飲む。勝っても負けても飲む。
パチンコ屋の駐車場にある うどん屋で焼酎(ロック)を飲む。
酔いが覚めたらまたうどん屋で焼酎を頼む。
そして食卓で晩酌などではなく、会社からの帰る道すがらコンビニでワンカップ焼酎を買い、一気に飲んでふらふらに酔って帰宅する。
1年365日、毎日飲んで、休肝日なし。人間ドックの前の日でも飲む。
酔っ払ったまま二日酔いで人間ドックを受け、担当者に怒られる。
もっと早くアルコール依存症の知識を持っていれば、断酒して飲まないか、節酒、減酒して減らすという手段でアルコール問題をずいぶん防ぐことができたと思います。
お酒を飲んだほうが偉いという風潮
日本では「飲めば飲むほど偉い」と言われる風潮がありますね。酒の文化ですね。
コマーシャルではこれでもかとビールを 「飲め!のどごし生!」 と繰り返すものですから、飲んでしましますね。
断酒し始めのころは、コマーシャルに腹が立つ人が多いそうです。
(筆者はビール党ではないので、それほどでもありませんでした)
※近年、酒のコマーシャルは18時以降、とメーカーで自主規制しているようです。
なにも知らない筆者は、飲んだら偉いのだと、日々浴びるように飲んでいました。
ここで気がついて節酒していれば、アルコール依存症になっていなかったでしょう。
しかり、私の両親は九州生まれで肝臓が強く、止めるきっかけがありませんでした。最後にはアルコール依存症となり、精神病院で治療するはめになりました。
依存症未満の方は、ここで我慢して「アルコール依存症・完遂」にならないようにしましょう。
そうでないと、一生お酒が飲めなくなります。
まだアルコール依存症になってない方は酒を控える
筆者はアルコール依存症になってしまっているため酒が飲めません。
依存症でない方は酒を減らす、依存症の方は酒を飲まないためのコツをいくつかご紹介します。
①お酒を飲めない何かをする
スポーツセンターに通うなどですね。
会員制の料金が高いフィットネスジムでなくても、区民スポーツセンターでもぜんぜん大丈夫です。
ウェイト・トレーニングやランニングで体を鍛え、鏡で身体を見てみましょう。
数か月通うと、「酒と運動不足でポッコリ出た」お腹が、引き締まっていくのが楽しくなります。
いつも通っていると、同じ時間に通ってくる常連の友達ができて、運動するのが楽しくなります。
「酒を飲まなくても楽しい」時間を見つけることが大事です。
散歩や、バイク・ロードバイクでのツーリングなども良い手段です。
わざと「飲まない時間をつくりだす」ことが大事です。
②妻が私にお酒を飲まないよう仕掛けたのは
「明日、食材を買いに行くので車を運転してほしい」
「娘2人とジブリ映画を観に行くので運転してほしい」
という具合でした。
こうなると、休みは朝っぱらから酒を飲みたいのですが、運転しなければならないため飲めません。用事が済んだらやっと飲める。
だいぶ減酒させられました。
③お酒を飲まないよう、家に酒をおかない
これは禁煙しようにも、手の届くところにタバコがあると吸ってしまうのと同じです。
ビールが冷蔵庫に冷やしてあると飲んでしまう。
お神酒が神棚や仏壇に置いてあると、手を出してしまう。
アルコール依存症はそんなものです。
家の酒類を全て捨てましょう。
④お酒を飲まないために、飲み仲間と合わないように
飲み仲間と会うと、必ず飲むことになりますね。
「肝臓の数値が悪化して、ドクターストップがかかっている」
などいう手段を使い、酒なしで昼メシでも食ってくれるなら、あなたの体を心配してくれている、本当の仲間です。
酒を飲まないで崩れるくらいの関係なら、それまで。それは本当の親友と言えないのではないでしょうか?
私は、30年も付きあいがある高校の同窓生3人と忘年会をするのですが。
忘年会なので、彼らは飲むのですが、筆者には酒を勧めてきません。
私がどれだけ入退院をしてアルコール依存症で苦しんできたか、よく分かっているからです。
アルコール依存症の治療・断酒を成功させる4つの手段 まとめ
酒の量ではなく、朝から晩までなど「飲んでいる時間が長い」ほど依存症になる可能性が高くなります。
その逆に、「飲んでいる時間が短い」ほど、アルコール依存症にはなりにくいでしょう。
アルコール依存症になる前に止めるのはあなたと家族の努力です。