私はアルコール依存症だ。
なのに断酒に失敗して再飲酒してしまい、また精神病院に入院している。
朝食後。
私「やった、やっとタバコが吸える。待ちに待った瞬間だ」
私は借りたタバコを1本持ち、中庭に出た。12時間ぶりのタバコである。
保護室では、タバコに制限がある。朝食後、昼飯後、3時、夕飯後の4本だけ。
1日4本は、ニコチン離脱症状が一日中続くため、スモーカーにとっては逆につらい。いっそのこと“無し”にしてくれればタバコを止めるのに、とも思っていた。
が、我慢しているとやはり吸いたくなる。その、貴重な1本を持って、喫煙所に向かった。(現在の瀬野川病院は、全館禁煙らしい)



メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
瀬野川病院1階の喫煙所



病院を上から見ると、長方形のドーナツ型になっている。
瀬野川病院の中庭
真ん中のドーナツの穴は吹き抜けになっており、地面は土。小さな花壇のようなものがレンガで作られており、草木が植えられている。
ドーナツの穴で吹き抜けのため陽が当たらないせいか、草木は患者と同じく、しおれて元気がない感じだ。葉っぱもない幹と枝だけの木が10本くらい植えてある、そんな感じ。
その周りを軽く散歩できるようになっている。中庭の四方には窓があり、窓の向こう側は病室だ。
瀬野川病院の喫煙所
その中庭の入口に、喫煙所が設置されている。屋外用で、灰皿が4つほどならべてあり、それをはさむように木製のベンチが据え付けてある。2人用のベンチが4つほどあり、8人~10人ほどが座って吸えるようになっている。
夜、就寝前は必ず満席になる。
喫煙所には屋根があり、雨の日でも問題ない。
そして私がが喫煙所に入ると、すでに4人の患者たちが煙を吐いていた。吹き抜けの上から夏の日差しが差し込んできて、木の葉に反射して葉っぱを黄色く輝かせている・・・・・・
久しぶりのタバコはうまい



ベンチの空席に腰を下ろし、金属のチェーンで灰皿に取り付けられている100円ライターを取り、タバコに火を着ける。
久しぶりのタバコだ。
うつむき、深呼吸するように、煙を肺の奥まで吸い込む。ニコチンが肺で吸収され、それは数秒で脳に届き、クラクラとめまいがした。
ぼやけていた視界がじょじょにはっきりとしていく。ただ単に目に映るだけだった物体を、脳がはっきり認識しはじめる。
そして顔を上げ、私以外の4人の患者を見た。
アルコール依存症が断酒に失敗して入院を繰り返す



私「あッ」
っと言ってしまった。
なんということだ。4人のうち3人は知り合いだった。知り合いといっても、シャバではなく病院内で知り合った友達だ。前回のアルコール依存症での入院時、共に苦楽を味わった仲間だった。
(以下仮名)
ヤナイさん(女性40代)
「あらー、また入ってきたんね。飲んだんね?」
肌は茶色く酒焼けし、酒のせいで老化したのかほとんど白髪でオバサンに見えるが、私と2つしか変わらない。
オオモリさん(男性50代)
「おう、久しぶりじゃのう。飲んだんか?」
M字ハゲになりつつあるが、優しい、話しやすいオジサン。
ワタナベくん(男性20代)
「あ、どうも、久しぶりです」
アルコール依存症なのに職場が飲み屋という変わったオニイチャン。離脱症状が出ているのか目の焦点があっておらず、空中を見つめている。まだ点滴の管が腕にささっていた。
みな、アルコール依存症患者だった。
みな断酒に失敗、再入院



まさか、みな断酒に失敗して再入院、しかも同じ時期に再入院していたことに驚いた。春に入院し、みんな同時期に退院した仲間たちだ。私も入れて4人とも、断酒に失敗したということになる。
「生、死、生、死、生死生死生死生死生死・・・・・・」などと悩み続けていた私には、最高の「仲間」だった。
私たちは互いに、退院してから再入院までの顛末を語りあった。何日かぶりの「笑顔」になった気がする。警察につかまり、留置所に入れられた事件のことを話したら、笑ってくれた。
皆、つらい思いをしていた。たくさん話して、笑った。仲間と一緒なら、苦しさを乗りれるかもしれない。少し希望がわいてきた。
妻が瀬野川病院に来た



看護師「奥さんが来られているので、出てください」
看護師にいわれ、保護室からデイルームに出た。そこには、心配そうにぼくを見つめる、愛しの妻が待っていた。
・・・・・・などということはまったくなく。
入院セットの入った黒いバックを持った妻は、憎しみ、憎悪、恨み、つらみ、とにかく、すべての憎しみをこめてぼくを睨みつけていました・・・・・・
まとめ アルコール依存症が断酒に失敗。入院を繰り返す患者たち
アルコール依存症は薬物依存です。しかし、他の薬物依存より治療が難しいのです。なぜかというと、アルコールは合法でコンビニやスーパーですぐ手に入るからです。
150円あればワンカップ焼酎が買えます。犬の散歩のついでにこっそり買って飲む人もいます。
そして家族の協力がないと、断酒を続けるのは困難です。独り暮らしで断酒を続けている方はいますが、まれです。
たいていは退院後、すぐに飲むか、何日かは断酒を頑張るものの失敗して再入院する人が多いです。誰も止める人がいないからです。
よって、アルコール依存症は治療が難しいのです。
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