アルコール依存症で精神病院の閉鎖病棟に入院して、はや2ヶ月が過ぎた。私は患者としては優等生なもんだから、週1で帰宅(外泊練習)も許可されている。
しかし、帰宅途中で酒を飲んだら一巻の終わりなので、車で妻に迎えに来てもらうのだ。
アルコール依存症の外泊は、もちろん酒なし
最初のうちは1泊2日、問題なければ2泊3日を自宅で過ごす。自宅で酒などを飲まず、平和な日常生活を送ることを練習するのだ。
主治医から、家での患者の様子を記入する紙きれが渡され、それを保護者(妻、親)に渡す。
- 家での様子は 静かだった / 普通 / 良くしゃべった
- イライラしていなかったか はい / 普通 / いいえ
- 病院に要望はありますか ( )
このような質問がならび、最後に
- お酒を飲んだか はい / いいえ
とくる。
ほとんどの患者はなるだけ早く退院したいので、家でなにかあってもじっと我慢して「よい子」で過ごす。外泊が終わり病院に戻ると、妻が看護師長にその紙切れを渡す。
それを2、3回繰り返し、「問題なく過ごせた」ことを主治医が認めれば、退院はもうすぐだ。しかし実際には、身寄りがいない独り暮らしの患者などは晩酌などをやっている。
入院し、一番最初に保護室に入った時、入院計画書に「3ヶ月の入院が必要」と記されていた。しかし、閉鎖病棟のオリの中で3ヶ月も過ごしたくない。早くシャバに戻りたい。それだけを考えるようになってくる。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
退院支援委員会で退院日が決まる
3回ほど外泊し、実績をつくった後、主治医との面接時にいった。
私「もうそろそろ退院したいのですが、どんなもんでしょうか」
主治医はすこし考え、こういった。
主治医「 来週末あたりにしましょうか。その前に退院支援委員会を開きましょう」
退院支援委員会とは
そして数日後、主治医、担当看護師、妻、私の4人で退院支援委員会が開かれた。アルコール依存症は、他の病のように「病気がよくなったらすぐ退院」というわけにはいかない。アルコール依存症は一生治らない病気、薬物依存のため
「家で酒を飲まずに生活していけるか」
が退院できるかできないかの重要なポイントとなる。
- 退院した後どうするか
- 仕事をするのか、しないのか
- 酒を飲まずにちゃんと生活できるのか
主治医と看護師と妻とで確認される。話しあいの後、主治医と保護者がOKをだせばめでたく退院のはこびとなる。
結局、一週間後に退院が決まりまった。それまでが長い一週間。1日、1日とカウントダウンしていく。仲がよい患者にだけ、退院する事をいっておく。心から喜んでくれるから。
そうでもない患者には言わない。ねたまれるから。
Xデー、退院日が来た
待ちに待って、やっと、その日になった。早く目が覚め、荷物をまとめておく。妻は9時に来ると言っていましたが、それまでの時間がとても長く感じる。
看護師たちに
私「短い間ですがありがとうございました。お世話になりました」
とお礼を言っておく。
まだ退院日が決まらない仲間にも、今日だけは
私「先にシャバに出てるから。みんな頑張って」
と言っておく。
妻が迎えに来た
曇りガラスのドアの向こうに、女性の人影が見える。背格好から、妻だとわかる。自動ドアがあいて、待ちにまった妻の姿が見えた。
患者仲間には、拍手された。
退院!
待ちに待った退院!
嬉しかった。
精神病院・閉鎖病棟よサヨウナラ
妻が外来の受付でいろいろ手続きし、やっとこの瀬野川病院との関係が切れた。
車に乗り、妻の運転で帰り路を急ぐ。車は国道を走る。何とも言えぬ複雑な思いで、通り過ぎる景色を眺めていた。
もう、二度とこんなことろに入院しない。もう、うんざりだ。もう、いっさい酒を飲まない。今後は真面目に生きていこう。
妻「昼飯は何がいい?」
私「こってりしたラーメンと餃子!」
そう答えた。
まずい病院食ばかりだった私には、久しぶりのラーメンは旨かった・・・・・・
・・・・・・ 第1話 完 ・・・・・・
第1話は完了です。
ご愛読ありがとうございました。
え、第1話?ということは、第2話が?
そう、まだ続くのです。
アルコール依存症はそう簡単には落ち着かないのです。
何回も再飲酒してしまいました。
そしてアルコール依存症専門呉みどりヶ丘病院を含め、何回も入院してしまったのです。
退院した後、がむしゃらに断酒を頑張ります。
まっとうな日々を送りました。
酒の無い生活を送りました。
そして、その生活が慣れてきます。
そして、辛かった入院も、喉もとすぎれば熱さ忘れる。
半年後、やってはいけないスリップ・再飲酒。
また転げ落ちていきます。
続きはまたアップします。
またよろしくお願いします・・・・・・
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