アルコール依存症の知人の体験談です。
断酒して健康を取り戻した人、命を落とした悲惨な人などさまざまな体験を聞きました。
そのうちのひとつの話です。
毎日晩酌をする人、または、ぽっちゃり系の方、職場や公共の健康診断をちゃんと受けてますか?
肝臓の値が基準値をはるかに超えていませんか?
肝臓の基準値はこの通りです。
- γーGTP 80以下
- AST(GOT) 7~38 IU/L
- ALT(GPT) 4~44 IU/L
最近は休肝日を週に2日とるようにいわれています。アルコールの摂取量をあるレベルで抑えようということです。
大量飲酒を続け、肝臓の数値が悪いままほおっておくと、慢性肝炎 → 肝硬変 → 肝臓がんと進んでしまうので気を付けましょう。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
肝硬変とは
肝硬変とは。
まず、アルコールを飲むと肝細胞が破壊されます。
その後修復されるのですが、毎日大量の飲酒を続けると、修復が間に合わなくなり、肝細胞が壊れたまま肝臓内が線維化していきます。肝臓が筋のかたまりになるのです。そして症状が進むと、本来はやわらかい肝臓が硬く小さく繊維状になります。これが肝硬変です。
ちなみに肝細胞が破壊された量を数値化したのが血液検査のγ-GTP、GOT、GPTです。
硬くなった肝臓は触診(右のあばら骨の下を触る)でごつごつしてわかるほどです。そして肝硬変が進むと、元の健康な肝臓には2度と戻りません。黄疸や腹水、肝不全、肝臓がん、食道静脈瘤(破裂すると血を吐き、手当が遅れると死亡)などの原因になります。
※肝硬変はB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが原因の場合ありますが、アル中ブログなので、今回はお酒の飲みすぎによるアルコール性の肝硬変の話になります。
大量飲酒と血液検査の値
お酒を毎日大量に飲まれる方。(1日で缶ビール500cc3本、日本酒3合、焼酎ストレートで1.5合以上飲む方)
まず、採血結果で異常が現われはじめます。
項 目 | 基準値 | 意 味 |
ALT(GPT) | 4~44U/L | 肝細胞にある酵素。飲酒などにより肝細胞が壊れると血液中に出ます。 |
AST(GOT) | 7~38U/L | これも肝細胞内にある酵素。飲酒などにより肝細胞が壊れると血液中に出ます。 |
γ-GTP (ガンマ) | ~80U/L | 肝細胞が壊れた量。アルコールを大量に飲んだ時や脂肪肝で上がります。 |
アルブミン | 3.8~5.1g/dl | 肝臓だけで作られるたんぱく質。肝臓が悪くなると下がります。 |
ビリルビン | 0.2~1.2mg/dl | 赤血球が壊れてできる黄色い色素。肝臓が悪いと上がります。多くなると、肌や白目が黄色くなります。 |
※上の写真は肝硬変の肝細胞で、青い繊維で細胞が絞めつけられています。肝臓に異常があると、血液検査で数値が基準値から大幅にはずれます。
肝硬変の進行
肝臓は「沈黙の臓器」と言われているように、痛みなどの症状はありません。男性より女性のほうが肝臓が小さいため、症状は早く進行します。
肝機能が悪いままアルコールを飲み続けると、肝臓が繊維化していきます。線維が肝臓全体にひろがり、ごつごつ固くなり、肝臓の大きさも小さくなります。肝臓が繊維だらけとなり、肝臓が正常に働かなくなります。こうなると肝硬変です。
お腹の右側、肋骨の下あたりを触ると、硬いごつごつした肝臓に当たることがあります。ほっとくと肝臓癌になる可能性があります。
肝硬変で肝細胞が破壊しつくされて、「これ以上破壊されない」という状態になると、逆に採血結果でGPT、GOT、ガンマ-GTPが正常値に近く良くなってしまうことがあります。肝臓が良くなったと勘違いすることがあります。
しかし採血結果が良いからといって、肝臓の状態が良いわけではありません。肝硬変で肝細胞が壊れるものがない、肝機能が無くなってしまった「おまえはもう死んでいる」状態なのです。
肝硬変で死亡した人の例① 50代で死亡
私が通っている断酒会の家族会で、息子さん(50代)が肝硬変になった人がいました。
息子さんがずいぶん前からアルコール依存症で、ガンマーGTPがいつも3000を超えていました。
ところがある日採血すると、ガンマが数百に減っていました。
酒を止めたのかというと、まったく止めていません。CTで肝臓の画像を撮ると、「肝硬変」との診断でした。腹水を流す薬を出されました。
先日、食道静脈瘤が7つもできており、手術をしました。ところが入院中に、検査で見つからなかった静脈瘤が破裂し、吐血し、ベッドが血まみれになりました。
その後の精密検査で、彼の肝臓に癌が2つ見つかりました。そして半年後、亡くなりました。お母さんはとっくに覚悟していたようで、気丈に断酒会にあいさつし、やっと安心したかのように来なくなりました。
肝硬変で死亡した人の例②
ある肝硬変の患者です。(看護師談)
その人が病院に来たときは既にて遅れで、肝臓癌も併発していました。その男性患者は、腹水でお腹が膨れ上がり、黄疸で目や顔の皮膚が黄色くなり、もう手が付けられない状態だったようです。
肝臓などが血液中の有害物を代謝しなくなり、血中アンモニア濃度などが上がり、意識が混濁し始めました。
娘さんがお見舞いに来ても意識混濁して、誰が来たのかすら分からない状態だったとか。
娘さんは涙を一筋流して帰られたそうです。
結局、最期には亡くなりましたが、娘さんはそんなお父さんの最期を見たかったでしょうか・・・・・・
肝硬変で死亡した人の例③ アルコール+B型肝炎
若いころ、住んでいる団地の下に鉄板焼き屋がありました。そこによく現場関係の人が集まっていました。
1つ上の先輩で、わりとイケメンの人が通っていました。私が訪れると必ず彼は居たので、毎日通っていたのでしょう。何年も通っているうちに、ふと気がつくと、彼の顔は茶色く、白目が黄色くなっていました。黄疸です。
イケメンは見る影もなく、しわしわになっていました。あだ名はいつのまにか「おじいちゃん」になっていました。
ある日、奥さんも来ていたので、それとなく「あんなに飲んで大丈夫なのか?」と聞いてみると、奥さんがひとこと、「彼はB型肝炎なの」だと。それだとアルコール厳禁でインターフェロンの治療を受けなければ。
「彼はもう、死ぬ覚悟で飲んでるの」
彼は時々腹を見せてくれましたが、妊婦のようにパンパンに膨れていました。
腹水です。
それから2年も経たないうちに、亡くなりました。中学生の2人の娘さんを残して、この世を去りました。ほんの42歳の若さでした。
肝硬変の症状は。腹水とは?
肝硬変まで進んでしまうと、以下のような症状が出てきます。
- 全身がだるい
- 微熱
- 手足がつる
- アルブミンの減少で手足がむくむ
- 手のひらが赤くなる
- 皮膚の血管が浮き出る
- ビリルビンの増加で黄疸が現われ、肌や白目が黄色くなる
- 羽ばたき振戦 鳥が羽ばたくように手が震える
- 血管にこぶができる(食道静脈瘤)
- 腹水
アルブミンの減少の影響で血管から水分がにじみ出る。
そしてお腹に水が妊婦のように溜まる(これを腹水という) - 同様に下半身に水が溜まる下腿浮腫
- 肝性脳症 アンモニアの血中濃度があがり、脳機能が低下する。
- 意識障害、錯乱状態、意識が無くなるなど。
「食道静脈瘤」:肝臓が固くなり、血液がうまく流れなくなり、血管にこぶができる。
破裂すると吐血、下血、命の危険があります。
肝硬変になる前に
肝硬変になってしまったら、もう治すことができません。血液検査で肝臓に異常が見つかった場合、肝硬変になる前に禁酒するかお酒を減らしましょう。アルコール性の肝炎はお酒を止めると回復します。
肝硬変になってしまったら、次は肝臓がんが待っています。食道静脈瘤が破裂して大量に吐血して死ぬか、肝臓癌で死ぬか、どちらかです。
余談ですが、アルコール依存症と診断され、断酒して毎月血液検査をしている私のγ-GTPは20前後です。普通に晩酌している人より良い数値なんです。
お酒を止めると、肝臓の機能は普通以上によくなります。
まとめ 肝硬変の症状とアルコールの関係 亡くなった3人の例
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、症状が出にくいです。必ず健康診断を受けて、「採血結果」を確認しましょう。
肝機能が悪いのに大量にアルコールを飲み続けると、最後には肝硬変になります。肝硬変になると、黄疸、腹水、食道静脈瘤などの症状が出てきます。
最期には肝臓がんになる可能性があります。食道静脈瘤の破裂で血を吐いて死ぬか、肝臓がんで死ぬか、どちらかです。