精神病院の入院形態は三種類あることは述べました。
- 任意入院
- 医療保護入院
- 措置入院
この3つです。
そして、私はアルコール依存症を治すために、酒を断つために自ら病院に来たのだから、当然、任意入院だと思い込んでいました。
しかし、保護室のベッドわきに置いてあった紙切れは「入院計画書」と「医療保護入院についてのお知らせ」でした。
その紙切れには
- 手紙やはがきなどを出したり受け取ったりは制限されない
- 行政機関職員、弁護士との電話・面会は制限されないが、それ以外の人との電話・面会は病状に応じて制限することがある
- 処遇に不服があれば県知事に請求することができる
などといったことがぎっしりと書かれていましたが、結局、「医療保護入院」なのです。
がくぜんとしぼうぜんとしました・・・・・・
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
任意入院の患者
なぜ、こうもがくぜんとするのかは、この記事に書いています。
⇒強制入院、医療保護入院でまた保護室へ 精神病院体験談(2-8)
任意入院は任意に退院できるのですが、医療保護入院は3か月は退院できないのです。
現実的な例で説明します。
任意入院とは
精神的に調子が悪いなどで、自分から病院を訪れて診察してもらい、入院した場合。また、自分で精神病の悪化に気づき、自ら病院を訪れて入院した人。入院中に治療を受けて退院します。
ヤクザの人が利用することがある
ある時、ヤクザ関係の方が入院してきました。ちょっと立ち話で病名を聞いてみると
ヤクザ「あいつら病院までは追ってこれんけぇのぉ・・・・・・」
だと。別に病気じゃない・・・・・・。「あいつら」が警察なのか、敵対する組織なのか誰だかわからないですが、ただ単に閉鎖病棟に逃げ込んできたらしいのです。まるで安全なホテル代わりです。
退院予定はいつになるのか
それはともかく、任意入院は自分の意志で入院するので、基本的には自分で「退院したい」と思えばいつでも自由に退院する事ができるのです。
私は2、3週間ほど入院してアルコールを断ち、アルコール離脱症状が収まった頃に退院しようと考えていました。ところが「医療保護入院」になると、話は違います。
医療保護入院の患者
医療保護入院は自分の意志で退院ができません。医療保護入院は夫や妻・子どもの病状にたまりかねた家族が患者をムリヤリ連れて来て入院になるケースがほとんどです。
医師の退院許可と保護者(家族)の許可が必要なため、数ヶ月にわたり、この塀の中から出ることができないのです。医療保護入院では、「医療計画」がたてられ、その計画通りに治療がほどこされる。その医療計画は、たいていワンクールの3ヵ月です。
アルコール依存症患者、薬物依存患者の場合
「治療」といってもアルコール依存症患者の場合は、ビタミン剤を点滴され、あとはひたすら酒害・断酒のための勉強会・セミナーに出席したり断酒会に出席したりの日々が繰り返されるのです。
覚せい剤など薬物の場合は、特に治療はなく、ひたすら勉強会です。アルコール依存症や薬物依存は、現代ではまだ治癒することはできない病気のため、治療と言うより教育なのです。
勉強会ばかり3ヵ月続く入院生活
アルコールや薬物で入院した患者には、勉強会の資料が渡されます。週に何回も勉強会があり、資料を一通り勉強させられ、結局3ヵ月近くかかるのです。再入院した患者にもまた、また新たに資料がわたされます。
1回勉強したことはだいたい覚えているのですが、再飲酒したということで、また繰り返し繰り返し勉強させられます。懲役・実刑3ヶ月ということです。
酒を飲んだのが悪いとはいえ、まったく時間の無駄に感じてしまいます。40代、人生の半分を過ぎた人間にとって、病院での3ヵ月は本当に人生の無駄に思えるのです。
常習犯で退院したらすぐ晩酌する人ならともかく、ちゃんと断酒をしていたしアルコールを口にしてはいけないのはわかりきっているため、アルコールが切れた時点で退院させてほしいと思います。
アルコール依存・薬物依存以外で医療保護入院になることも
医療保護入院はほぼアルコール依存症と覚せい剤などの薬物依存ですが、変わった患者もいました。
40代で軽い双極性障害なのですが、親が金持ちで本人は職を転々としていました。そして、親のカードを使い、友達をたくさん引き連れてキャバクラで豪遊していたのです。キャバクラでクレジットカードやツケで600万円も使ったそうです。
激怒した親父が、たまりかねて瀬野川病院につっこんだのだとか。
また、30代までちゃんと仕事をしていて、なんらかの原因で40代で仕事をやめ、引きこもりに近い状態だった男性。親が瀬野川病院に無理矢理つっこみました。しかし、ちゃんと貯金はあるし、パチンコには行くし、毎日私とよくしゃべり、別にコミュ障でもなんでもない。
担当医も病名がつけられずに困ってしまい、結局6か月も入院したというかわいそうな男性です。
私から見ても、特に病気ではなく、ただ仕事をやめて、しばらく無職だっただけ。なのに、親に無理矢理病院に突っ込まれたという哀れな患者でした。
早く退院して働かないと
私のほうは、まだ子供が学校に行っているので働かなくてはならない。なのに3ヵ月も入院させられるのはとても痛い。履歴書にキズがつく。3か月何してたんだと。
過去に長期入院のせいで、2社ほど入院退社してしまいました。そして断酒はするものの、数ヵ月~1、2年でスリップ(再飲酒)してしまうのです。結局、数週間のつもりが、数ヶ月の服務となってしまいました。がくぜんとして気落ちしました。
ちなみに医療保護入院の場合、主治医が退院許可を出さなかったり、家族が同意しない場合はさらに何か月もの長期間、塀の中にいなければならないのです。
措置入院の患者
措置入院の場合、私がみた限りではほぼ警察がらみです。
- 薬物で警察に確保された人
- 酔っぱらって店の器物を破損した人
- 酔っ払ってケンカなど傷害事件を起こした人
- 精神病などで同じように器物破損・傷害事件を起こした人
措置入院は長期間にわたる入院に
それらの人が警察から病院へ送り込まれてきます。医師、保護者、それに加えて警察も介入してくることになります。
「措置入院で数か月間」入院の後、主治医の判断でやっと「医療保護入院に切り替え」られるため、さらに長期間入院しなければならないのです。
慢性期病棟の患者
そのほかに、慢性的な精神疾患の患者は、長期間入院することになります。任意入院、医療保護入院は瀬野川病院だと1階、3階、4階が急性期病棟になりますが、長い慢性期患者は2階の慢性期病棟に移されます。
慢性期病棟の患者たち
私がみた限りでは次のような病状の患者が多かった記憶があります。
- パーソナリティ障害
- 発達障害
- 社会適応障害
- 重い統合失調症
- 窃盗癖があり何回も繰り返す人
- 薬物がやめられず何回も再使用する人
- その他もろもろ・・・・・・
慢性期病棟には何年も入院している患者がいます。これらの人たちは社会生活が送れない、就職ももちろんできない。長期間入院して、退院したら障害者の施設か、障害者の作業所行きです。
私は任意入院で退院するつもりだったのだが、想定外の医療保護入院でした。しばらく退院ができないため、がくぜんとして気落ちし、脳が思考停止しました。
まとめ 精神科の任意入院・医療保護入院・措置入院の患者の特徴
- 精神病の入院形態には3種類あります
「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」の3種類です - 任意入院は自分の意志で退院できますが、医療保護入院・措置入院は自分で退院はできません。
- アルコールや薬物依存の患者の場合、医療保護入院では3ヵ月ほど入院することになります。
- 措置入院は6ヵ月や何年も入院する患者がおり、もはや医療つきの刑務所です。
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