(精神病院からの脱走体験談、つづき)
普通、アルコール依存症や薬物依存で精神科に入院する場合、急性期病棟に入院する。
しかし、今回の入院は前回から3ヵ月経っていなかったため、急性期病棟ではなく、慢性期病棟へ入院となり、またもや閉鎖病棟へ閉じ込められるハメに。この慢性期病棟がもう、とんでもない所・・・・・・慢性期病棟の嫌だった体験を書きます。みなさんは決して入らないように。
●記事の内容
慢性期病棟がは急性期に比べてあまりにもひどく、印象に残っている12の体験談をつづっています。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
精神科 急性期治療病棟とは
精神科 急性期治療病棟は以下のような病棟である。
精神科急性期治療病棟は、精神症状が悪化し集中的な治療が必要となった患者様が入院する病棟です。
社会医療法人慈生会ウェルフェア九州病院 目指す精神科急性期治療病棟とは より引用
集中的な治療といっても、抗精神病薬の大量投与や注射で急速な鎮静を図るのではなく 安全で安心できる環境と手厚い看護の中で、適切な薬物療法と受容的支持的精神療法を行います。3ケ月以内の早期退院を目指す病棟です。
急性期病棟は、要は3か月で退院できる病棟で、アルコール依存症、薬物依存、軽い統合失調症、双極性障害などが多い。お酒や薬物が切れたら普通の人が多いため、わりと常識があり、日常会話も普通にできる。
精神科 慢性期病棟とは
精神科 慢性期病棟はこのような病棟。
症状の回復に時間を要する方や、再燃を繰り返す慢性期の方が入院しています。長期に入院している患者さんの退院支援に取り組んでいます。
東京武蔵野病院 私たちの看護 より引用
精神病院のホームページには以上のように書かれている。要は入院期間が長い、病状が繰り返し悪化、ひんぱんに入院する病棟だ。
精神科の慢性期病棟の実態はというと、発達障害・パーソナリティー障害・適応障害や違法薬物の繰り返し使用などで
- 「もう治る見込みがない」
- 「治療のしようがない」
- 「10年、20年単位で入院している患者もいる」
このような患者ばかりなのだ。ほとんど常識がなく、日常会話ができる人はほんの一握りである。
1.慢性期病棟の実態
私が再飲酒を繰り返し、いつも入院していたのが「急性期病棟」。瀬野川病院の1階にある急性期病棟は、シャブやアル中で入院してきた患者が半数以上。ほぼ30代~40代であり、皆だいたい友好的だ。
しかし2階にある慢性期病棟は、何年も、または10年・20年も入院している患者が多く、なぜかなにかしら敵対的なのだ。なにかあると、すぐ怒鳴りあう。(手を出すと隔離病室、いわゆる独居に閉じ込められるため、手はださない)
テレビの視界をふさぐだけで怒鳴り声が飛んでくるのだ。毎日、患者同士、あるいは患者と看護師が怒鳴りあいをしているような、ケンケンした雰囲気の中で過ごさねばならない。
毎日まいにちそれが続く。
嫌だ。
2.テレビについて
デイルームのテレビは、というと。(各部屋にはテレビが無い)
午前中はなぜかメジャーリーグ(BS。当時はイチロー選手が活躍していた)
→ ヒルナンデス
→ 水戸黄門
→ 必殺仕事人(BS)
→ あれ?中村主水がスーツを着てる!? と思ったら、はぐれ刑事純情派の再放送(BS)
→ 相棒(BS)または相撲
→ プロ野球(ここは広島なのでカープばかり)
長年入院しているじじいの患者が、テレビチャンネルをルーチン化しているらしい。急性期病棟ではチャンネルを多数決やジャンケンで決めていた。ここではそれもなし。
急性期病棟は若者にチャンネルをゆずる優しいお年寄りが多かったため、「ミュージックステーション」「世界の果てまでイッテQ」などが普通に観れて、夕方からは楽しめた。
しかしここ慢性期病棟では毎日まいにち水戸黄門 → 相撲 → 野球だ。年寄り専用のテレビになっており、バラエティー番組などが映ることはない。うんざりするが、一番後輩なので文句はいえない。
なにも観る気がしない。読書にふけるしかない。
もう嫌だ。
3.タバコについて
長期入院患者だと思うが・・・・・・ハイライトやエコーなどのきついタバコを一日2箱くらい吸って、一口吸い込むごとに 「ゲホゲホゲホッ」 と10回は咳き込む患者3名。
呼吸が苦しそうで、吸わなきゃいいのに、と思ってしまう。それでもやめられないのがタバコの恐ろしさか。そのうち一人は 「肺炎」 と診断されていて、タバコで何回も死にかけたとか。
看護師も強烈に注意をするのだがそれでも止めない。タバコの購入が禁止されているため。人にタバコをもらい吸い続け、たぶん近いうちに肺胞がやられ肺気腫になり、一生治らないだろう。
20年入院している患者である。
4.患者の心
急性期病棟は、ほぼ3ヵ月以内に退院するため、復職後の仕事の心配や、退院後どうするかについて前向きな話が多かった。
慢性期病棟だと、退院が何か月先なのか何年先なのか検討がつかない。そのため、病院所有の施設にいく話だとか、一生ここにいなければいけないのかとか、とにかく後ろ向きな話ばかり。聞くだけで、こちらも暗くなってしまう。
もう嫌だ。
先日、私の部屋のオジイサンが退院していったが、行き先は病院所有のデイケア。こんな話ばかりでウンザリだ。
5.看護師の接遇態度が非常に悪い
常識だが、1F急性期病棟では看護師は患者に対して 「○○さん」 と、「さん」 づけで名前を呼ばれていた。まあ、普通だ。
しかし、ここ慢性期病棟では、看護師が患者に対して「オマエそこにおったら邪魔じゃろうが。 あっちいっとけ!」などと平気でいう。
そんなのありえんわ。
6.喫煙所が狭すぎ
一応、珍しく、この病院には喫煙室がある。理由として聞いたのは、「患者がイライラしてるのが、病状が原因なのか、タバコが吸えないからなのか区別がつかないから」だそうだが、現在は全面禁煙である。
1階の急性期病棟は、中庭があり、そこにベンチが4つ並べてあった。灰皿も4つあり、10人くらいはタバコを吸いながらリラックスして談笑できる。患者同士の唯一の楽しみのひとつだ。夜、消灯前は患者がいっせいにタバコを吸いにいくので10数人になるが、平気である。
3階、4階にも病棟と喫煙所があるのだが、ちゃんと6畳ほどの喫煙室が設けてあり、ちゃんとタバコの煙吸入テーブルがあり、ある程度の人数なら余裕で入れる。談笑もできる。
ところが2階の慢性期病棟は違う。
外へ向いたほんの「1畳」ほどの空間に鉄格子が貼ってあり、灰皿は一つしかない。食後など、その1畳へ10人近くがムリヤリ入ってタバコに火をつけるもんだから、ギュウギュウ詰めになって話をするどころではない。誰かのタバコの先が誰かの服にあたり、焼け焦げる。いくらなんでも1畳はひどい。
もう嫌だ。
7.患者層の違い
急性期病棟の患者層は、アルコール依存症3割、シャブなどの薬物依存3割、他は軽い統合失調症だったりした。酒・薬物が切れた患者や軽い統合失調症の人たちと普通に楽しく会話できていた。
慢性期病棟の患者層は、約50人中、アルコール依存症2人、薬物依存1人、他は重い統合失調症やパーソナリティ障害、発達障害などばかり。まともな会話ができない。会話が成り立つ人が、ほんの2~3人しかいない。
この状況で数ヶ月過ごさなければならない。すぐキレる患者が多いため、毎日のようにケンカが絶えず。そこらじゅうの壁に殴った穴や修理跡がある。
もう、耐えられない。
8.独り言は当たり前
いや、ぼそっと独り言なんていうレベルではない。
一日じゅう独り言を、いや独りではなく、見えない誰かと喋っている。喋りすぎでダミ声になってしまい、よけいにウルサイ。
もう、病棟にいるだけで嫌になる。
もう、耐えられない・・・・・・。
9.われ先にと食堂へ
食事は、各病棟が時間をずらして2階の食堂で食べることになっている。
普通の病棟だと、看護師が「昼ごはんですよ」というと、患者がパラパラとエレベーター前へ集まってくる。テレビに夢中で、順番は最後に、という人もいる。
ところがここ慢性期病棟は、昼メシの30分前には自動ドアの前に並びだす。(閉鎖病棟のため自動ドアは看護師がもっている鍵がないと開かない)
そして昼メシ時間ちょうどに自動ドアがあくと、先頭の患者は全速力で食堂へかけっていくのである。それに続き、次の患者も猛ダッシュして食堂へ向かう。「ぶつかったら危ない!」くらいの勢いである。他の病棟の患者が逃げ出すくらいの勢いである。
まるでディズニー映画のライオンキングに出てくるバッファローの集団。引かれたら危ない。
しかし、早く食堂にいってもご飯の量が増える訳でもない。「食べるくらいしか楽しみがない」のはわかるが、なぜ全力疾走するのか、未だにわからない。
10.常識はずれの患者が多い
- オッサンが、飯のおかずの皿を、まるで赤ちゃんのようにスミからスミまでペロペロとなめまくる
- 60を超えたオッサンが、飯を食べる時、右手に箸、左手にスプーンを持ち、両方使ってまるで幼稚園児のようなみっともない食べ方をする。だれも注意しないのか、なにか信念があるのかは誰も聞かないので定かではない。
- 「水中毒」 というのを耳にしたことがあるが、本当にそういうオッサンがいて、一日中水道の蛇口に口をつけてはゴクゴクと飲んでいる。50代にみえるが、見た目はチビ・デブ・坊主頭にタンクトップで、裸の大将そのものである。
彼はしばしば全裸で歩き、看護師に注意される。
売店日は週に一回である。そして「菓子・ジュースのたぐいは週1800円まで」 という規則がある。
そこで彼は、1800円の制限いっぱいにペットボトルのコーラ、缶コーラ (コカ・コーラやペプシではなく、よくスーパーで売っている1缶58円などの偽物?コーラ) を目一杯買い込んだ。部屋に帰るなり、それを1時間くらいでぜんぶ一気飲みしたのである。
本人は計8リットル分のコーラを飲み干したといっていたが、(同じ部屋だったので) ゴミ袋一杯に捨てられたペットボトルと缶かんを見たところ、まあそれくらいは飲んだだろうと思われる。
そしてその後、すぐに晩飯。
晩飯のあとは自然のなりゆきで、胃の中のものを廊下中に全嘔吐!8リットル分のコーラと晩飯をすべてリバース!
廊下を歩けないほどびしゃびしゃに嘔吐物をまき散らし。
もちろん、その色はすべて茶色いコーラ色。
夜勤看護師がすべてを拭いて掃除をしてたが、とうぜん激怒。
その 「8リットル全コーラ嘔吐事件」 以降、彼は売店でのコーラ購入禁止の刑に処された。そりゃまあそうだ。
50代のおっさんである。
もう嫌だ。
11.処置をしてくれない
入院していると、テレビや読書など、座っている時間がシャバにいる時より非常に長い。座っている時間が非常に長いと、腰にくる。ずっと腰痛に悩まされる。朝一は必ずラジオ体操があるのだが、そんなもので腰痛は治らない。
自分でストレッチもするのだが、やはり湿布がほしい。1F急性期病棟ではよく湿布をもらっていたので、ここ慢性期病棟でも同じように頼んでみた。
すると「主治医の指示がないので湿布は出せません」
なんと!
ここは精神科、湿布と主治医とは関係ない!シャバでは普通に薬局で湿布を購入して自分で処置するやろ!看護師権限で湿布くらい出せるだろ!
意味がぜんぜんわからん。
おかしなことだらけ。
もう耐えられない・・・・・・。
12.風呂に入らないヤツがたくさんいる
私は風呂嫌いだが、入浴日が週に2回しかないとさすがに入りたくなる。いくら冬場とはいえ、入浴が3~4日に一回だとさすがに身体が気持ち悪い。頭がかゆい。
ということで、風呂が楽しみになる。湯船につかるのが楽しみになる。
ところが、患者の中には風呂を面倒くさがって、入らないヤツがいる。風呂の時間、ずっとトイレに隠れているヤツがいる。
看護師がちゃんと記録していて、ながらく入ってない患者を見つけ出し、ムリヤリ風呂に入れる。なので、2週間ぶりや、もっと永く入ってない患者が湯船に浸かることになる。風呂の順番が早いうちは湯船にちゃんと浸かるのだが。順番が後のほうだと、気持ち悪くて湯船に入れたもんじゃない。
なんせ、身体を洗って湯船に浸かるという当然のマナーを守らずに、服を脱いでそのまま湯船にジャポンなんてのが当たり前なのだ。
もう嫌だ・・・・・・。
まとめ 精神病院・慢性期病棟の信じられない12の体験談
ざっと思い出して書いてみただけでも、これだけ不満があった。これが毎日まいにち繰り返されるのだ。細かいことでは、もっといろいろあったのだが、もう書ききれない。
まあ、 「酒を飲んでしまった自分がまいた種」 を刈り取っているので、入院は我慢するしかない。
そんな状況をなんとか耐え忍び、嫁さんとはなるべく密に連絡をとるようにしていた。ところが、それが逆に仇となってしまったのである・・・・・・。
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