(精神病院からの脱走体験談、つづき)
精神病院から脱走先の体験談
脱走1日目の夕方、広島から博多に着いた。精神病院は、患者が逃げたということでてんやわんやになっているに違いない。患者の逃亡は看護師長責任だからだ。
ホテルは、ちょうどよいビジネスホテル、一泊5,000円のを見つけた。病院と違い、ふかふかのマットにふかふかの掛け布団、しばらく寝転んで、幸福感を味わった。
次に、時間があるので変装、というか、髪型だけはばっさり変えておこうと、美容室を探した。ホテルから10分歩いたかどうかの近所に、カット・シャンプー染めで7,000円の美容室を見つけた。
染め込みで7,000円なら高くない。
今どきの若者たちが集うようなおしゃれな外観の店だった。



私が25年前、若かりし20代の頃は、美容室で4,000円なりを支払ってオシャレを気取っていたが、子供ができてからは美容室から一切足が遠のいていた。今はカット・シャンプー・ヒゲ剃り込み込みで2,000円ぽっきりである。
瀬野川病院の閉鎖病棟にも散髪屋があり、まったく同じことをしても3,700円もする。しかも注文はなしだ。やけに高く感じた。ただ、20代の女性の美容師さんと6畳あまりの店舗でたった2人きりで話すのは楽しかった。
あ、ヒゲも剃ってくれたので理容師か。
ただ、それだけの時間を過ごすのに3,700円を払うのは、クソ野郎ばっかりの閉鎖病棟では悪くない。ただの坊主だと900円と激安なので、患者はわりと坊主かスポーツ刈りが多い。
「震災刈り」(モヒカンのような感じ)でも900円でいいのか?と聞いてみると。「それでいい」ということなので、刈ってもらったことがある(TOKIO松岡みたいな感じ)
そんなことはどうでもいいのだが、とにかくカット・シャンプー・染めで7,000円なら安い気がしたので、そこに入ってみた。
平日なのにすでに客が多く、男女半々くらい。わりと人気店なのだろう。
スラムダンクを知らないって?
話は変わるが、嫁さんが大のジャニオタで、嵐の相葉ちゃんのファンだったりしていちいち髪型に文句をつけるので、相場ちゃん風に上と前髪を伸ばし気味のロン毛に近い髪型だった。
そして店に入りしばし待っていると、二十歳半ばくらいの若い店員さんが 「どんな風に致しましょうか?」と聞いてきた。
私は変装として、髪型を変えてイメチェンしようと思っていたので、ばっさりショートにしようと考えていた。
「ええとですね、マンガのスラムダンクで、3ポイントシュートの『三井 寿』っていたでしょう?あんな感じにしてください。で、軽く染めて。」



「あのー、ぼく、スラムダンク読んだことないんですよ。」
ええっ!マジで?
昔でいえばスポ根マンガは、 「巨人の星」 とか 「あしたのジョー」 ですが、今のスポ根マンガの金字塔は 「スラムダンク」 でしょう?
あの名作を読んでない?
いや、もう既に古いのか?
私ががオジサンなのか?
確かに、30年前に現役で少年ジャンプのスラムダンクを読んでいたのは高校生の頃だ。
その頃のマンガは少年ジャンプ全盛期で、
「スラムダンク」(井上雄彦)
「北斗の拳」(原哲夫 武論尊)
「ドラゴンボール」(鳥山明)
「シティ・ハンター」(北条司)
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)
など、名だたる名作が生まれた時代だ。
今や 「黒子のバスケ」 や 「テニスの王子様」 とかそっちなのか??いや、それももう古いのか。
世代のギャップにたじろぎつつ、ショックを受けつつも、鏡の前に雑に並べてあったいわゆる 「ヘア・カタログ」 的な本を手に取った。適当に三井寿風ショートのモデルを選び、こんな感じにしてくれと頼んだ。
染めてみた



生まれて初めて、染めも頼んだ。ただ、茶色はありがちだし、ピンクだとすぐ職務質問されそうなので、地味に赤っぽい色を選んだ。
店員さんが言うには 「今プラス500円で、オーガニックの原料を使用した髪染めをしてますよ。オーガニックなので、髪も地肌も痛みにくいですよ。」
やたらオーガニックを勧めてくる。こちとら髪を染めたことすらないのに、オーガニックやらオーガズムやらよう判らん。勧められるままにした。
染め中は髪にベタベタといろいろ塗られて、桜木花道(上絵の真ん中の主人公)みたいな赤髪になったらどうしようかと不安ではあった。(ちなみに三井寿はその右である)
出来上がりは、日陰では黒く、陽に当たると少し赤く見える程度で、そこんとこは一応満足した。これなら職務質問されないだろう。免許証すら持っていないのだから、職質はヤバイ。
とりあえずは安心して、ホテルへ戻った。明日は早起きして、ホテル前のパチンコ店の新装開店に並ぼう・・・・・・
あなたに役立つ記事
精神病院の閉鎖病棟から脱走・・・・・・やってはならない事をしてしまった筆者
⇒精神科の閉鎖病棟から脱走した患者 閉鎖病棟脱走記(5)
酒気帯び運転・飲酒運転で悲惨な目にあった人たち・・・・・・しかし30年前はそれは普通のことでした
⇒酒気帯び運転・飲酒運転
アルコール依存症者の、正月やクリスマスの過ごし方・・・・・・少し工夫がいります
⇒アルコール依存症のイベントの過ごし方