(精神病院からの脱走体験談、つづき)
目覚まし時計で目が覚めた。精神病院から脱走中なので、特に起きなくてもよいのだが・・・・・・ビジネスホテルの目の前にあったパチンコ店が、本日グランドオープンなのだ。そのため、急いで並ばなければならない。急いで着替えて、といっても逃亡中なので一張羅(いっちょうら)なのだが、とにかくそれを来た。
そしてエレベーターで降り、ホテルのフロントで今晩の予約を済ませておいた。朝の8時くらいだったか、パチンコ店に急いだ。
●パチンコ店の新装開店・グランドオープンとは
昔のパチンコ店は「新装開店」というと、ひと島(1列10数台)を一気に入れ替えるのが普通であった。新装開店はお祭りモードで、新しい台に座ればほぼ、いや半分以上の確率で勝つように設定されていた。
ところがここ10年あまりか、「新装開店」といってもひと島全台ではなく、一部のほんの4~5台を入れ替えるだけになってしまった。それでは並んでも台がとれないため、新装開店のありがたみがなくなり、客が並ばなくなってしまった。
ちなみに最近のパチンコ台は派手すぎるほどLEDのきらびやかな演出が増え、スロットは1台で40~50万円、パチンコでも20~30万円の費用がかかる。その費用が大きいからかもしれない。
ところがグランドオープンは違う。新しい店舗のオープンだったり、既存の店舗でも一気に数10台を入れ替え、しかも「出る」設定にしていることが多いため、超アツイのある。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
福岡のパチンコ店の新装開店の様子
すでに20人くらいの主に若者たちが店の前を陣取っていた。
広島県人のわたしは福岡のパチンコ店のシステムをまったく知らないので、若者の一人に聞いてみた。
「まず前整理券をもらい、9時ごろに本整理券をもらいに並ぶんですよ(確かそんな感じ)」
という、2段階整理券配布方式と言えばいいのか、とにかく面倒くさいやり方であった。
実は彼も県外から来たらしく、客はどんどん増えていく。100人どころではない。300人かそれ以上に増えていった。パチンコ好きのカップルや、5~6人の集団の大学生のニイチャンたちもいる。
これはただ事ではない。
「これだけの規模の人が集まるのは、この店が 『出す』 証拠」といえる。
しかし、朝20人くらいのところをせっかく早く並んだのに、結局もらった本整理券は280番、かなり後ろのほうでがっかりした。順番が遅いと、新台に座れないからだ。
福岡はファミマばかり
開店まではまだ時間がたっぷりある。
近所のコンビニへ、また酒を買いに走った。気づいたのは、博多はやたらファミマが多いこと。この近所だけなのか、ファミマしか見当たらない。この交差点の左にファミマがあり、その通りの右にもファミマがあるような、ファミマ独占状態。
広島はわりと、セブンイレブン、ローソン、ファミマと群雄割拠の熾烈な陣地取り争いが続いているようだが、博多(の一部)はとにかくほぼファミマ政権、一企業独占、他企業一切排除の様子であった。
酔ってパチンコ店でブラックアウト
しかし売ってる酒はどこも同じ、こちらは酒さえ手には入ればよい。またストロング・チューハイ9%を飲みつつ、パチ屋の列に戻った。
私は本来、酒をザルのように飲めるのだが、今や抗精神病薬や精神安定剤と同時に飲むため、ひんぱんにブラックアウト※(記憶が飛ぶ) するようになっていた。
パチンコ屋の開店と同時に(並んで)店内に入り、確か※沖スロを打って出だしたような気がする。もう既に記憶があやふやである。ブラックアウトしたのだ。しかし、おぼろげながらコインはちゃんと景品交換をしたような気がする。
ブラックアウトとは
ブラックアウトは、血中アルコール濃度が上がるにつれ、記憶がなくなることをいう。普通の人でも3次会や4次会などで飲みすぎると記憶がなくなり、次の日覚えていない、ということはあるでしょう。
アルコール依存症者は、うつ病と併発したりし向精神薬や精神安定剤をいつも飲んでいる。すると、ワンカップ3合くらいであっという間に記憶が飛ぶ。記憶がないのにうろついて、無銭飲食や万引きなどの軽犯罪を犯し、警察に保護されることもままある。
私の場合も、飲んでもしっかりしているように見えるが、実は焼酎ワンカップ3本くらいで記憶がなくなっている。
沖スロとは
沖スロは、当たりが来たら台のハイビスカスなどが点灯し、初心者にも当たりが分かりやすい種類の台。しかし、数10回も連チャンしたり、1,000ゲーム(3万円くらい)以上ハマったりと、波が荒いのが特徴である。
最初で最後のメシを食う
夕方、酔いが覚めてきて正気に戻った。
そして驚いた。
財布を開くと、1万円札がなんと10枚も増えていたのだ。要するに、「寝て、目が覚めたら財布に10万円増えていた」というような事が実際に起きてしまったのである。
これは嬉しかった。その金で、逃亡中に唯一の食事、 「回らない寿司 、約5,750円なり」を食した。
ウニ、トロ、ホタテなどを好きに握ってもらい、好きなだけ食べた。熱燗も2本くらい呑んだ。
美味かった。後にも先にも、それが唯一の飯だった。
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