(精神科からの脱走体験談のつづき)
次の日も、目覚ましで起き、一張羅に着替えた。
コンビニで酒を買い、パチンコ店に打ちにいった。しかし、またブラックアウト(薬とアルコールの大量飲酒で記憶が飛ぶこと) してよく覚えていない。サイフを見ると、少し負けたようだった。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
久しぶりの風呂に入る
ビジネスホテルへ戻ると、別館に大浴場があるのを知った。
閉鎖病棟は週に2回しか入浴できない。夏場で汗をかいていても、冬の寒い時期も、週に2回しか入浴できない。そのためずいぶん風呂に入っておらず、何日ぶりかはもうわからなくなっていた。久しぶりにホテルの風呂に入った。
ビジネスホテルとは思えない、まるで温泉旅館のような大浴場だった。
若い新婚らしき夫婦が、男風呂、女風呂と二手に分かれて入っていった。男風呂ののれんをくぐると、まだ若いサラリーマンらしき連中が3人ほど服を脱いでいた。出張だろうか。
私も構わず服を脱いで入った。
替えの下着を買っておけばよかったと後悔したが、もう外に出る気がなかった。同じ下着を病院からずっと着っぱなしだ。
部屋にもどり、買い置きの酒を呑んで寝た。
ホテルの予約がとれない、ピンチ
さらに次の日、今晩の予約を取ってチェックアウトしようとした。すると 「本日の予約は満室になっております」 とのことだった。これはさすがに困った。
とりあえずはチェックアウトした。
別のホテルを探さなければな、と思いつつもパチンコ店へ向かった。飲みながら打ったので、またブラックアウトした。
ブラックアウト中に、自分でブラックアウトの用意をしていた
夕方、正気にもどった。
ポケットを探ると、メモがあった。
そこには、こんなことが書いてあった。
3月〇日 パ -7000円
コ -1000円
ホ -5000円
3月〇日 パ -8000円
コ -1500円
ホ -5000円
- 「パ」 はパチンコの収支だろう。初日に10万勝ちだったが、じょじょに減っている
- 「コ」 はコンビニで使った酒代だろう
- 「ホ」 はホテル代だと思われる
ブラックアウトしても良いように、自分で収支をメモっていたようだ。じょじょに所持金が減っている。
早く同級生に「泊めてくれ」の電話すべきかと思ったが、逃亡中なのでスマホがない。
今どき公衆電話は探せど探せど見つからない。
博多駅にはあるのだろうが、駅がどこだったかわからなくなっていた。ケータイで便利な世の中になったが、ケータイを持てない人はどうしているのだろう。
車の下生活の始まり
夕方、散策しまくったが、いい考えが見つからない。
ふと、とあるマンションに外車が止まっているのに気が付いた。福岡なのに「品川ナンバー」で、大きなアウディだった。マンションは、いかにも、というような高級げなマンションだった。
東京から車で来たのか?東京から車で来るくらいなので、長期滞在ではないのか?どちらにしても、車を出す確率は低いのでは?
人目がないのを確認して、駐車場に入った。そして、そのアウディの下に潜り込んだ。絵はうまく描けないが、こんな感じだ。
3月初旬、寒かったので、さらに酒をあおって気絶するように眠り込んだ。
カラスのカーカーという鳴き声が耳に響いた。
線路が近いのか、しょっちゅう 「ガッタンガッタン」 という音が耳にこびりついてうるさかった・・・・・・。
悲惨な車の下生活
いくら金を節約するためとはいえ、車の下生活は、無残だった。
ダウンジャケットと、裏に毛がついたズボンを履いているといっても、3月初旬の夜中は寒く、しかもコンクリート直に寝ている。寒さで何度も目が覚める。そのたびに酒をあおって寒さを麻痺させた。
後になって「寝袋を購入しとけばよかった」と思ったが、常に泥酔状態だったためそこまで考えつかなかったのだ。
車の奥へ奥へ潜り込む
最近のアウディは逆走事故防止のためか、バンパーに下向きのセンサーがいくつも付いていた。その真下にいると、運転手がエンジンをかけた瞬間にアラームが鳴るかもしれない。
それを避けるため左に身体をずらしたが、今度は顔の前にぶっといタイヤがある。これでは、万が一、車をバックされると頭蓋骨ごと潰される。
なので、バンパーの下のさらに奥、センサーのないガソリンタンクの下あたりまで潜り込んだ。
放尿
泥酔するために焼酎をガブ飲みする。そのため、尿意が頻繁に起こる。
ただ、試してみるとお分かりになるのだが、いや、誰も試さないと思うのだが・・・・・・
低めの車高の車の下に、分厚いダウンジャケットとズボンを履いたまま出入りするのはかなりの労を要する。しかも、立ち小便をするために車の下から出入りするところを目撃されたら、一発で警察に通報されるだろう。
なので、寝たまま小便を垂れ流した。
右横を向き、ズボンのチャックを下げ、自分にはかからないように、小便を垂れ流した。駐車場に軽い傾斜がついていたため、小便はうまい具合に足元へ流れていった。足を、小便をよけるように左へずらした。
液状の透明な便しか出ない
朝は、いつのまにか目が覚める。
起き、車の下からはいずり出て、切れかかったアルコールを補充するためにまたファミマへ向かう。大きな公園が近所にあったため、そこの花壇のふちに座り、隠れるようにしてワンカップ焼酎を喉に流し込んだ。
少し経つと、春の暖かい陽射しで気温が上がってくる。
それとともに便意をもよおした。大便のほうだ。公園の真ん中にあるトイレに駆け込んだ。和式のトイレで、しゃがみ込んで出すものを出そうとしたが、水のような液体しか出なかった。
それもそうだ。
初日に食べた寿司以外、胃の中に入れたものは焼酎とチューハイだけ、固形物は一切何も食べていない。腸の中には何もない。だから、何も出るハズがない。なのになぜ便意がおこるのか、不思議に思った。
車の下生活はつづく
酔いがまわり、少し気分が復活してくると、またパチンコ店へ向かう。ブラックアウトするまでコンビニでで焼酎を飲みパチスロを打ち続け、日が暮れるとまた同じ駐車場に向かう。
車が動いた形跡はない。また品川ナンバーのアウディの下に潜り込む。そこで焼酎を気絶するまで飲んで、睡眠薬なしで寝る。
一週間くらい、そんな生活を続けた・・・・・・
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