アルコール依存症の子供への悪影響 アル中の閉鎖病棟体験談3-3

アルコール依存症の子供

●酒を止めると約束したのに、迎え酒をした

私は妻に 「酒を止める」 と約束していた。しかし飲酒欲求を我慢できず、朝から飲んだ。
本来は昨晩で酒をやめるつもりだった。「最後の晩餐」としてたらふく飲んだ。そのせいで二日酔いになり、朝、頭が痛く、気分も悪かった

子供のおもちゃ箱の底をさぐり、底に隠してあった焼酎を見つけ、迎え酒をした。

妻との約束をやぶってしまった。

あきれ果て、すべての希望を失った彼女の運転で、2人は精神病院へ向かった。

●筆者筆者

 


メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。

※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします

アルコール依存症の子供への悪影響

アルコール依存症の悪影響
アルコール依存症の悪影響

家は広島市内の北のほうなのだが、病院は市内をはさんで反対側にある。20キロ以上離れている。車で1時間以上かかる。その長い道中で、妻から2人の子どもたちの様子を聞かされた。

アルコール依存症の子供への悪影響

思春期に入った娘、長女ナナ(当時中2)は父親のアルコール依存症の影響をもろに受け、攻撃的になっていた。母親が悲しむ姿、涙する姿をずっと見ていた。そして「うちが父さんの息の根を止めてやる!」と叫んだらしい。

まだ幼いチー (当時小3)もアルコール依存症の影響を受け、普段は寡黙でおとなしいのに、「父さん、もうやめて!」と大粒の涙を流しながら叫んだらしい。

全く知らないし、まったく覚えがなかった。アルコール依存症の子供への悪影響は相当なものだった。まったく知らなかった、「父さんの息の根を止めてやる!」 と実の子供に言わせるまでの悪影響を与えていたことを

アルコール勉強会にて学習した、子供への悪影響

アルコール依存症
アルコール依存症

精神病院ではアルコール学習会が定期的に開かれる。そこでアルコールについてさまざまなことを勉強する。ここでは遺伝について少々。

両親のどちらかがアルコール依存症の場合、その子供たちもアルコール依存症になる可能性が高い。DNAの遺伝もあれば、環境遺伝もあるということだった。

オヤジがアル中だから、自分は絶対に酒を飲まない」と考えていた人が酒浸りになる。

親がアルコール依存症でひどい家庭で育ったので、私は酒飲みとは絶対結婚しない」と胸に秘めていた女性が、なぜか大酒飲みと結婚してしまう。

そしてアル中、またはその配偶者となり、一生苦しむ。不思議な現象だが、その確率はかなり高い。

現に断酒会に来ている人の父親は、アルコール依存症が原因で亡くなっている。私の父親も大酒飲みだ。これは親だけでなく、祖父・祖母の家庭や親族がアルコール依存症でも遺伝するそうだ。

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任意入院のつもりが、医療保護入院となる

精神科の医師
精神科の医師

病院へ到着し、主治医の診察を受けた。私は晩酌をしていただけで、連続飲酒までは進展していなかった。

※連続飲酒
⇒参照:連続飲酒の恐怖、やめたいのにやめられない 精神病院体験談(2-2)

酒を抜くために、2~3週間の任意入院のつもりでいた。

入院には3種類の形態ある。

  • 任意入院:自分の意思でいつでも入退院できる、もっとも軽い入院。
  • 医療保護入院:保護者(親や妻など)が許可を出さないと退院できない。
    いくら退院したくても、保護者が認めないと退院できない
  • 措置入院:酔っ払って警察沙汰の事件をおこしたり、あるいは覚醒剤などの犯罪をおかしてしまった場合。警察の拘置所から強制的に入院させられる。

※任意入院、医療保護入院、措置入院とは
⇒参照:強制入院、医療保護入院でまた保護室へ 精神病院体験談(2-8)

私が 「任意入院にしたい」 の旨を主治医に伝えると、医師は「この状態で任意は無理ですね。保護入院にします」といった。

え、なんで?

医師の診察室の自動ロック

医師の前で夫婦喧嘩
医師の前で夫婦喧嘩

ところで、診察室のドアは、医師のデスクに設置されたボタンでロックできるようになっている。保護者に強制的に連れられてきた患者が、逃げようとしても逃げられない仕組みになっているのだ。

以前、断酒会に来ていた夫婦。

奥さんがアルコール依存症の旦那さんを入院させようとして、診察に訪れた。旦那さんは入院する気は全くなかった。しかし奥さんは入院させる気満々だった

診察が進むにつれ、話はどんどん入院の方向に進んでいった。頭に来た旦那さんは、思わず奥さんの顔を殴った!

医師は即座にボタンを押してドアをロックし、看護師を呼びつけた。屈強な看護師が3人現われ、旦那をむりやり病棟につれていき、強制入院になったそうだ。

私はなにもしていないのだが、屈強な看護師たちに囲まれ、むりやり保護室、鉄格子の独房へ連れて行かれた。

なぜ看護師が屈強かというと。男性の看護師はみな、柔道の黒帯だからである。病院内には柔道場がある。

なぜ柔道かというと。暴れるキチガイ患者を取り押さえるためである

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精神病院、閉鎖病棟の保護室とは

保護室での点滴
保護室での点滴

私は屈強な看護師たちに囲まれ、むりやり閉鎖病棟の保護室、鉄格子の独房へ連れて行かれた・・・・・・そしてすぐ点滴、点滴。点滴の嵐である

身体中に染みわたったアルコールを抜くための点滴。ピンク色で透明な点滴袋からのびたチューブの先の針を、腕に刺すこと計4回。いや精神科の看護師は血管に針を入れるのがヘタクソなので、私の腕に浮いた太い血管を外しまくり、刺しまくることそれ以上。

点滴袋を確認すると、「ブドウ糖」 「ナトリウム」 くらいの成分しか入っていない。前回の入院では連続飲酒に入っていたため、ひどいアルコール離脱症状に襲われた。体中の震え、したたり落ちる脂汗、耐えられないほどの不安感にやられた。

点滴のスピードを速める

私ははっきり言って点滴がキライである。いや 「点滴が好き」 「好きでたまらない」 人などはいないでしょう。とにかく身動きがとれなくなるため嫌いである。

点滴はイヤだ。

で、なにをするかというと。みなさんご存知の、点滴チューブの真ん中あたりにある 液の落下を調節するプラスチックの部品をいじくる

点滴の速度を変える
点滴の速度を変える

注入スピードをマックスまで上げる。

ポタ、 ・・・・・・ポタ、・・・・・・ポタ、」 と落ちる点滴液を、「ポタポタポタポタポタ」 まで早める。すると、2時間かかる点滴が、30分で済む

看護師の足音が聞こえたら元に戻す。見つかったら怒られるから。

次に何が行われるのかというと。看護師による、病棟内の案内である。ところが、ぼくは過去3回 計6ヶ月以上もここに入院していたため、看護師たちは私を覚えていた。

「今から病棟の案内をします・・・・・・ あ、金田一さんはご存知だからいいですよね」

うれしいやら悲しいやら、複雑な気分になる。

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閉鎖病棟の保護室の様子

閉鎖病棟の保護室の壁
閉鎖病棟の保護室の壁

それでは私がご案内する。ここは瀬野川病院という精神病院で、通称 「Z」 と呼ばれる隔離病棟、鉄格子の独房、保護室である。

左右に10部屋づつ、計20部屋の牢獄が並んでいる。男女は関係なく、1人1部屋。そして合流地点に看護師詰所があり、デイルームがあり、テレビと少年マガジンやジャンプが置いてある。

「りぼん」 「別冊マーガレット」 は置いていない。

すべての部屋、廊下に監視カメラが設置され、詰所のモニターで監視されている

保護室の監視カメラ
保護室の監視カメラ

保護室には布団が地べたに置いてあり、シーツは無い。シーツを引きちぎればヒモになり、首をくくる患者がいるからだろう

トイレは各部屋にあり、まるで刑務所のように扉は無く、用をたす姿があらわになる。いくつかの部屋は便を出しても自分で流せず、外にあるボタンを看護師が押すことになっている。下痢の場合、部屋中に臭いが充満する。ほんとうに刑務所と変わらない・・・・・・

保護室の壁は木板。爪で引きちぎるように書かれた 「帰りたい」 という文字や、「たっ君LOVE」など中二並みの落書きや、やたらめったにツメで引き裂かれた線が無数に浮かび上がる。

朝7時20分、昼11時20分、夕方5時20分になると、入院したばかりの患者には食事が部屋に運ばれてくる。一週間ばかり経って気分が落ち着いた患者は、保護室を出てデイルームに行ってみんなと飯を食う。

その後、一斉に服薬がある。患者によっては薬を拒絶したり、飲んだフリをしてトイレに流すヤカラもいる。そのため口をあけ舌もあげ、ちゃんと飲んだことを看護師へ見せなければならない

以上、精神病院の閉鎖病棟の保護室の様子である。

その後、中庭へのドアが開放され、タバコが一本だけ吸える。(当時)朝食、昼食、夕飯後、それと午後3時に1本の、計4本だ。

タバコが少ない、ニコチン離脱症状に悩まされる

閉鎖病棟の灰皿
閉鎖病棟の灰皿

このタバコ4本というのが、実は厄介だった。

タバコを何時間も我慢していたため、その瞬間だけはとても美味しくいただけるものの、それ以外の時間はニコチン離脱症状に悩まされる。いっそのことタバコ無しにして頂ければ、止めたくとも止められないタバコを吸わずにすむのに。

ここで疑問に思われた方。なぜ病院内なのにタバコが吸えるのか。

なぜかというと。

精神病院に入院する患者は、当然精神病を患っている。うつ病、躁うつ病、不安神経症、アルコール・覚せい剤などの薬物依存・・・・・・ただでさえ不安感・イライラ感があるのに、タバコを吸えないとなると、さらにイライラ感が増す。

なぜ、今イライラしているのか。なぜ情緒不安定なのか

医師による正確な診断ができなくなってしまう。よって、酒はダメだがタバコだけは吸える、という精神病院・閉鎖病棟が多い

(現在は、瀬野川病院は院長が変わって全面禁煙になっている。アルコール依存症専門病院の呉みどりヶ丘病院だけは吸える)

私は酔いが覚めるにつれ、アルコールの離脱症状が始まった。


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