※記事は、事実をもとに構成されています。決して薬物の乱用を勧める内容ではありません。
アルコール依存症の知人の体験談です。
断酒して健康を取り戻した人、命を落とした悲惨な人などさまざまな体験を聞きました。
そのうちのひとつの話です。
前記事とは別の話である。
同じ病棟に、覚せい剤中毒の患者がいた。今回は彼の話だ。
30代前半の若い彼を、仮にT氏とする。
彼はイケメン、というより昔風のハンサムな顔立ちだった。身長180センチはゆうに超えている長身。
なんの苦労もないだろうに思えるが、覚せい剤に手を出すとは、人にいえない苦しいことがあったのだろうか。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
30代で薬物中毒となった患者
T氏は覚せい剤でパクられ、薬物中毒者として措置入院になったようだ。そしてアル中たちと同じこの閉鎖病棟に送り込まれた。
ところで、閉鎖病棟での日常の過ごし方といえば、テレビを見るか本を読むか。あるいは喫煙所でウマが合う人とくだらない雑談をして時間をつぶすことになる。
喫煙所で彼がしゃべっている姿は一見普通だが、目を合わせるとこれが普通ではない。目をギョロッと見開いて、というか、上下のまぶたをにチカラを入れてガン見してくる、というのか、要するに「目がイッている」ように見えた。
覚せい剤を使用したらどうなるか
彼はシャブを打ったらどうなるのかか、つぶさに話してくれた。
打ったらすぐハイテンションになり「とにかく走るんです。 街中を走りまくるんです」だそうだ。
彼は5~6時間もぶっ続けに走るらしい。走って帰ってきたあと、たっぷりの牛乳をゴクゴクと飲むらしい。
どこかの薬物中毒者のブログで読んだのは、2日も3日も寝ずに男女の行為に妄りふける、というものだったが。
しかし、走りまくった後、牛乳を飲むんだったら健康的でいいじゃないか、と、その時は思った。
薬物中毒者が家に戻ると
ある日、打って走りまくったあと自宅に戻ると「床一面に透明な液体がまかれていた」らしい。
そしてその時彼は、なんと「サリンがまかれた」と思い込んでしまったらしい。
サリンが部屋にまかれているだなんてとんでもない。
本当ならすぐに息の根が止まって死体となって床にころがっているところだが、シャブのせいで思考回路がおかしくなっていたのだろう。
すぐさま110番して、「サリンが部屋にまかれている」との被害通報をした。
警察もとんでもない通報を受けたものだから、特殊部隊を含め10数人もが駆けつけてきたらしい。
しかし「それはただの水だった」と判断したらしく、特殊部隊10数名は帰っていった。
だが、本人はまだサリンと思い込んでいた。
再び110番。
こんどは人数が減って数名だけ、部屋に駆けつけてきた。そして事情聴取だけして、帰っていった。
その後数回にわたり110番し、訪れた警官が、どうもおかしい、クスリを使用しているのではないかということで、最期にパクられた。
そして閉鎖病棟へ送り込まれた。
それが彼がここにいるいきさつだった。
退院したのに再入院
何日か後、彼が退院の日となった。
皆がT氏を取りかこみ、退院おめでとう、2度と薬物はするなよ、そういって拍手で彼を送り出した・・・・・・
T氏の退院から一週間もたたないある晩、誰かが驚きの声をあげた。
「Tが保護室におるで!」
「マジか、ホンマか」
「Tじゃと思う、あれは」
保護室側のエリアと、閉鎖病棟側のエリアとは自動ロック付きドア一枚で仕切られている。T氏と交友があった患者たちは、私も含めて透明なドアにへばりついた。
ドア越しに保護室側をまんべんなく観察した。
長身の彼の姿が見えた。
「また『やった』か。再犯か」
「退院から一週間も経ってないじゃろ」
送り出した私たちは、なんだかがっかりした。
目があうと、彼がドアによってきて、何かを言った。
しかしドア越しでは彼の声はうまく聞こえなく、こちらは手のひらを耳にあて、「何?」とゼスチャーをした。
すると彼は右と左の手首を合わせて、手錠をかけられるしぐさをした。
「あ~あ、またやったか、再犯か」
「今度は実刑かね」
「実刑じゃろうね」
しばらく経つと、彼の姿を見なくなった。
・・・・・・薬物中毒者は再犯率が高い、ように思う
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