なんとか大部屋に異動した私は、精神的にも落ち着いてきた。
しかし、あることを考えていた。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
精神病院・閉鎖病棟から脱走を試みる
ヒウラ「うち、1回脱走したけど、すぐに捕まったんよ」
私「ホンマに? どうやって脱走したん?」
ヒウラ「作業療法を、運動場でやる時がたまにあるでしょう?」
私「うん、うん」
ヒウラ「患者が外に逃げんように、出口に見張りがいるでしょ」
私「うん、うん」
ヒウラ「 見張りが話をしてる時に、隠れて逃げたんよ」
私「へーっ、すごいねえ。で、なんで捕まったん?」
ヒウラ「 出たらすぐ国道があるでしょ。そこをずっと歩いてたら、瀬野川病院の車が何台も来て捕まったんよ 」
私「そりゃまあそうなるね。裏道でも通らなきゃ」
「脱走 = 病院の責任問題」になるため、必死になって捕まえにくる。
しかし私は、何回目かの入院で県外まで完全に脱走したことがある。
⇒精神病院・閉鎖病棟脱走記ー精神科を脱走した体験談
ヒウラちゃん(仮名)という、同じ病棟の女の子と仲良くなり、そんな話もするようになっていた。
瀬野川病院はすぐ上が山、すぐ下が川、山川にはさまれており、川沿いにずっと走っている国道がメイン道路になる。その国道か、川を渡って反対側の土手道の道路2本しかない。
脱走しても、そのどちらかを走っていればいずれ追っ手の車に拉致されてしまう。
しかし閉鎖病棟に入院させられるとみな、まず考えることは「この瀬野川病院・閉鎖病棟からの脱走」なのである。
脱走のために閉鎖病棟をくまなく調査する
もちろん私も考えた。こんな刑務所のような病院にはいたくない。どうやって脱出するかを考察する前に、病棟をいろいろ観察してみた。
まず、開くドアがあるのか確かる。廊下、曲がり角、いろんな所にあるドアノブをさりげなく回して確かめる。結局すべてのドアは開かず、鍵がかかっていた。
ひとつだけドアが開いたが、中を見ると鉄格子があり、その中に患者がいた。つまり3階にある保護室だった。
次に、監視カメラの場所、数を調べてみる。
廊下の天井、トイレの入り口の天井、ありとあらゆる所が監視カメラで見張られている。直径10センチほどの黒い半球が、ありとあらゆる場所の天井についているのだ。
黒い半球を、目をこらしてみると、中にカメラが透けて見える。カメラがどの方向を向いているかもわかる。全カメラとその方向をチェックした結果。
ほぼ死角なし。
あるとすれば、便所の個室か、デイルームか喫煙所。デイルーム・喫煙所は詰所の前にあるため、常に看護師の目につく。便所の個室から外へはもちろん脱出できない。
閉鎖病棟から脱走はできるが犯罪になってしまう
となると・・・・・・。 病棟の外側の窓を割って、下に降りていくか。
ガラスを割って降りていくか
窓から見ると、雨どいのパイプが上から下に通ってる。
そのパイプにしがみついて降りていくか。ある場所は、なぜか2階の上に屋根が付き出ている。4階の窓からからその屋根への高さはたった2階分だ。飛び降りられなくもない。
窓は強化ガラスだが、金属のイスの足の部分を、自分の体重ごと窓にぶち当てれば、割れるかもしれない。2階の屋根へ数メートルくらいなら、飛び降りられるだろう。そこからさらに地面に飛び降りるか、何かにつたって降りる。
あとはサヨナラだ。
ドアのキーを奪い取るか
もうひとつの方法は、女性の看護師からキーホルダーごと奪い取る方法だ。
声が出ないように、そっと後方から接近し、チョーク・スリーパー(柔道の絞め技)で動けなくし、キーホルダーだけ頂く。そして、ロックされている自動ドアを開け、キーでエレベーターを使い1階に降り、「閉鎖」でないエリア、つまり外来などをそしらぬ顔で通り抜ければあとはサヨナラだ。
やるのは、深夜。
昼間は大勢の男性看護師、デイルームは患者たちでいっぱいなのでできない。夜になると患者は寝静まり、看護師は当直がたった3人なのでできるかもしれない。
精神病院から脱走したあとどうするか
脱出してからのことも考えておかないといけない。
まず、ヒウラちゃんの経験から、国道を通るのはダメだ。車で追跡され、捕まってしまう。
隣のスーパーの倉庫にでも隠れて、一晩過ごすか。それとも、裏山にじっと隠れるか。
しかし、それじゃランボーか犯罪者だ。
川を利用して脱走するか
いい考えを思いついた。
病院の目の前を川が流れてる。私は水泳が得意で、海水浴に行くと、遠く離れたブイまで、何往復もするくらいだ。数キロは泳げる。
川の水に浮かんでおくだけなら、1時間くらいは平気だろう。まだ季節は夏、暑いので、夜の川に入り、浮かんでいればよい。
しばらく浮かんでいれば、下流の街中まで勝手に川が運んでくれるはず。呼吸のため口と鼻だけ水面に出しておけば、夜は誰も気づかないはず。
いつ実行しようか・・・・・・と、思ったが、やはり実行するのは止めた。
どうしても犯罪になる
「窓ガラスを割って脱出」すると、器物破損罪になる。
「キーホルダーを奪って逃走」すると、こんどは傷害罪・窃盗罪で逮捕される。
前科がつけば、即会社はクビになり離婚は目に見えている。たかが酒を飲みすぎたくらいで前科がつくなんてバカバカしい。この考えは、胸の中にしまっておくことにした。
精神病院・閉鎖病棟からは脱走できないのか 精神病院体験談
- 実は瀬野川病院の看護師のほとんどは柔道の有段者なのです。
柔道三段の女性看護師もおり、院内に稽古場があるほど柔道に力をいれていました。暴れる患者を抑え込むためです。おそろしい精神病院です。 - いくら打撃系をしてたといっても、柔道有段者2人を同時に相手はできない。夜中に脱走する方法を2種類考えていましたが、もし男性看護師と争いになった場合、打撃をだせばこちらは傷害罪、むこうの柔道技は正当防衛に使うのだろうから罪に問われず。圧倒的にこちらが不利。そう考えて止めました。
- ところが私は何回目かの入院のとき、耐えられずに脱走してしまいます。脱走に成功したのです。そして県外へ高飛び。「精神病院・閉鎖病棟脱走記ー精神科を脱走した体験談」をどうぞ。
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