●アルコール性うつとは
アルコール依存症の人が長期にわたる大量飲酒をやめると、離脱症状として「うつ症状」が現れます。
うつの人はアルコール依存症になりやすいですが、逆にアルコール依存症から「うつ状態」になる人もたくさんいるのです。
酔っている時は「ふつう」の状態でも、酔いが覚めると「気分が落ちこむ」うつ状態になります。
アルコール依存症とうつ病が同時に発症する、4つのパターンがあります。
- 単に合併で、うつ病・アルコール依存症どちらにも共通の原因があるケース
- 大量飲酒を長期に行うことによりうつ病を引き起こすケース
- うつ病でゆううつな気分や眠れない状態を緩和するため、飲酒を繰り返すことにより依存症になるケース
- アルコール依存症がアルコールを断つことで離脱症状としてうつ状態になるケース
今回のケースは長期の大量飲酒後のアルコールを切ることによる離脱、つまり4.になります。
メンヘラ男。アルコール依存症歴11年、25歳でうつ病、39歳でアルコール依存症とうつ病を再発、さらに双極性障害になりメンヘラに。断酒に失敗し広島の瀬野川病院、呉みどりヶ丘病院などの精神病院・閉鎖病棟に10回も入院。精神障害者手帳2級、障害年金2級。断酒・入院・うつの体験談、どうやって飲まないで生きていくかのノウハウを書いていきます。
※なお、筆者の体験談は事実のままですが、断酒会の事例は架空の人物ものとします
アルコール離脱症状でうつになる
は、と目が覚めた。
朝になったようだ。保護室の外、廊下の窓は、黒に混ざってほんのり青い。まだ陽は昇っていない、早朝のよう。
夜明け前に目が覚めてしまったようだ。
うすぼんやりと窓を見ていた。しばらくすると、意識がだんだんはっきりしてくる。まだ、アルコール離脱症状を感じた。酒が切れてずいぶん経ったような気がしがしたが、症状はまだ収まっていない。
手はまだちゃんと震えていて、脂汗も額をじっとりと濡らしていく。
しかしそれでも、昨日よりはずいぶん軽くなった気もする。アルコール離脱症状の身体的なほうは、もうしばらくすれば治まっていくだろう。
しかし、心のほうはいっこうに収まる気配がない。マイナス思考がずっと続いている。
アルコール性うつが治まらない
アルコール離脱症状のうつ状態で、マイナス思考がずっと続く。うつが治まらない。意識がある間、離脱症状とうつ症状がずっと続く・・・・・・。昼寝が出来る患者がうらやましい。うつの症状で、昼間はまったく眠れない。
まだ部屋の電灯はついていない。6時になったら看護詰所のスイッチで電灯が点くが、自分では電気がつけられない。
暗い部屋に、ひとりベッドに座っている。この鉄格子の部屋には、私の他に誰もいない。話ができる相手がいない。つらさを分かち合える仲間もいない。ひとりぼっち、狭い保護室で離脱症状にずっと耐えなければならない。心はずっと、不安感や恐怖感を感じている。
アルコール性うつでマイナス思考に
なぜ私ははひとり、ここにいるのだろう。私が何をしたというのだろう。
酒を飲んだだけじゃないか。酒などみんな飲んでるじゃないか。なぜ私だけ苦しまなければならないのか。どこで間違ったのか。ここでどうすればいいのか。ただ、ここで生存している。ただそれだけ。生きていることになんの意味があるのか。
シャバから隔離され、鉄格子のなかに閉じ込められ、気の触れたような患者と共にただただ生存している。私がここで生きていることに意味は? いても、いなくても誰も気にしないんじゃないの? いっそのこと、死んで消えてしまったほうが楽なのでは・・・・・・
ずっとマイナス思考が続き、うつ症状がひどくなっていく。
うつ症状に次々と襲われる
生きていることの意味はなんなの? 生きていても何も良い事はないじゃないか。
死んでも何も変わらない。ならば、死んでしまったほうが楽なんじゃないのか。私は苦しみから開放され、家族も苦しみがら開放される。
しかし、娘を2人残して父親が消えてしまったら、彼女たちはどうなる? 娘たちに深い傷を与える結果になるのではない。ダメだ。しかし、苦しい思いをしながら生きるのも嫌だ。
死んでしまいたい。
いや、それはダメだ。
死ぬ、ダメ、死ぬ、ダメ・・・・・・
私は完全にうつ症状の思考回路におちいり、はいあがれない状態にいた。
布団をちぎれば、ヒモはいくらでもできる。ただ、保護室にはヒモをかけるものがない。ドアノブは、部屋の外側にある。どうやって死ねばいいのかを考えあぐねる。
マイナス思考の連鎖
私の頭はうつ症状に侵されてマイナス思考におちいり、負の考えがさらに負の考えを呼び、どんどんと落ちていった。
マイナス思考の連鎖が始まる。どうやっても止めることができない。私の心は谷の底へと逆さに落ちていった。暗闇の底へぶつかり、はいまわる。
脱出することのできない暗闇でぐるぐると同じことを考え続ける。
やめるんだ。
よく考えてみろ。東北の震災にあった人達のことを考えろ考えろ思い出せ。彼らは子供、親、クラスメイトを一瞬で奪われた。生き残った親や子どもことを考えろ。
私はなんとおこがましい、と思った。彼ら犠牲になった人達は、死にたかったわけではない。生きていて、これからも生きるハズだった。なのに彼らは、最も大事な我が子、親を一瞬で奪い去られた。
自分をちゃんと見ろ。ちゃんと生きているじゃないか。
だれも死んじゃいないじゃないか。なのに、自ら死ぬことを考えている。生きるハズだったのに、死んだ人たち。生きるのに最も大事なモノを失った生存者たち。
なんでもない、ただ生きているのに、死ぬことばかりを考えている自分。なんておこがましいのだろう。まったく死ぬ必要などないのに、死を考える。
その思考は、最愛の人たちを亡くした、不幸のどん底の人を侮辱しているのではないか、なんと浅はかなことを考えていたのだろう。
そんな考えはやめろ、きっぱりやめろ。考えるてはいけない考えるな生きることだけを考えて頑張れ。
私は、暗闇の底から脱出しつつあった。
すでに窓ガラスは明るく、黄色い光をはなっている・・・・・・
アルコール性うつを保護室で耐える。うつ症状が延々と続く まとめ
- アルコール離脱症状のうつ症状、狭い鉄格子の保護室、テレビもなく、ひとりぼっちで誰もしゃべる人がいない、これらの要因が重なって、私はどんどんマイナス思考に落ちていきました
- アルコール性うつは重く、楽しい事など考えられません
- アルコール性うつせいもあり、元来もっているうつ病のせいでもあり、どんどん悪循環にはまっていきます
- うつ病を持っている人がアルコール禁止なのはそのせいです。ただでさえうつ病で消えて無くなりたいと思っていたりするのに、アルコール性うつがさらに追い打ちをかけ、行動させるからです。
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